2026年7月31日金曜日

ハンターハンター415話、ヒュリコフの沈黙が引っかかって眠れなかった


415話を読み終わってからしばらくスマホの画面を見つめたまま固まってしまいました。ヒュリコフが2ヶ月も前から自分の呪いを知っていた——この情報量、消化しきれていない人も多いんじゃないでしょうか。僕もその一人です。

なんというか、判明したことが多すぎて、逆に「一番大事なのはどれだろう」と整理したくなる回でした。今回はそんな415話を、僕なりに一つずつ噛み砕きながら書いていこうと思います。

※本記事は原作のネタバレを含みます。

この記事では、415話で明らかになった事実を整理したうえで、特に気になった謎について僕なりの考察を添えていきます。読み終わる頃には、たぶんあなたも「あれ、これもう一回読み返したい」ってなるはずです。

415話は「2ヶ月前」と「現在」、2つの時間軸で進んでいる

まず全体の構成から整理しておきます。415話は大きく分けて、出航2ヶ月前(壺中卵の儀の直後)のヒュリコフの回想パートと、現在12日目——特殊戒厳令発令——の各王子陣営の動向パートの、2つの時間軸を行き来する作りになっています。

この構成自体、冷静に考えるとちょっと不穏です。過去パートで「実は知っていた」という事実を積み上げておいて、現在パートで「でも報告していない」という違和感を突きつけてくる。読んでいる間は気づかなかったんですが、あとから振り返ると結構意地悪な作りだなと思いました。

【事実】ヒュリコフは自分の呪いを2ヶ月前から知っていた

ここが今回いちばん衝撃だった部分です。ヒュリコフは自身の念能力——解析系のPC型能力「コンボマスター」を使って、自分に強力な「ソエモノの呪い」がかけられていることを把握していました。しかも、自分と同じ攻撃を受けている人物がもう一人いることまで分かっていたそうです。

さらに、ヒュリコフ自身もビヨンドが自分の実の親であることを知っていて、本人に直接電話をかけています。この時点で、彼が単なる「巻き込まれた被害者」ではなく、かなりの情報を握った状態で動いていたことが分かります。

呪いそのものについても、解析に1年、解毒剤の作成には2年かかるという、継承戦にはまったく間に合わない規模のものだと明かされました。つまりヒュリコフは、自分がもう「詰んでいる」ことを分かった上で船に乗っていた、ということになります。ここ、何度読んでもゾッとします。

あと地味に見逃せないのが、この会話の中でベンジャミンが「謝肉祭」に参加していないという事実がビヨンドの口から出てきた点です。単なる小ネタに見えて、後々効いてきそうな気がしています。


【事実】特殊戒厳令下、各王子陣営はこう動いていた

現在パートの動きも一気に整理しておきます。

  • クラピカ・オイト陣営:富裕層向け宅配サービス「ヨロズヤ」を使い、大和文字(ひらがな・カタカナ・漢字モチーフ)による暗号手紙を外部の妹に向けて送った
  • その後バビマイナから、ワブル王子は「処分保留」として1014号室からの外出を禁じられた
  • 第3王子チョウライは行方不明
  • 第4王子ツェリードニヒは目を閉じて絶(あるいは未来予知)の状態で待機中
  • 第6王子タイソンは国王軍を従えて移動
  • 第7王子ルズールスは警護の「ライス」と共に行方不明
  • 第13王子マラヤム陣営(ビスケ達)は別空間での籠城を決定

こうして並べてみると、動いている陣営とほぼ止まっている陣営がくっきり分かれていて、次にどこが動くかで一気に流れが変わりそうな気配を感じます。


なぜヒュリコフはベンジャミンに報告しなかったのか

ここからは考察パートです。今回いちばん引っかかっているのがこれです。ヒュリコフは2ヶ月も前から自分が「ソエモノの爆弾」だと知っていたのに、主君であるベンジャミンに一切報告していません。もし報告していれば、ベンジャミンはヒュリコフを船に乗せない、あるいは念獣対策を取るなど、何かしら手を打てたはずです。それをしなかった、というのがどうにも不自然に感じます。

考えられる説はいくつかあると思っていて、

一つは「情報がまだ不確定な段階で伝えて、陣営内を混乱させるのを避けた」という説。

もう一つは「ソエモノが複数いることまでは把握しきれておらず、報告の優先度を見誤った」という説です。

ただ僕は、これだけでは説明しきれない気もしていて、ヒュリコフが何らかの形で裏切っている、あるいは操作されている可能性も、正直まだ捨てきれていません。これは根拠ではなく期待に近いですが、この沈黙にはもっと重い理由がある気がしてなりません。あと今のヒュリコフはキャラが違いすぎて違和感が否めません。


ルズールスと「ライス」失踪、人格交換説について

もう一つ気になっているのが、第7王子ルズールスが第2王妃所属兵の「ライス」と共に消えた件です。以前、ハルケンブルグの能力によって「シカク」が自害した事件がありましたが、その際インターホン越しに対応していたのが「ライス」でした。

この時ハルケンブルグ陣営が能力を放ち、ライスの人格をハルケンブルグ陣営の誰かと交換していたのではないか、という説がかなり有力視されています。もしこれが正しいなら、共に姿を消したルズールス自身も、すでにハルケンブルグ陣営に乗っ取られている可能性があるわけで……これが事実なら、今後の展開の火種になるのは間違いなさそうです。個人的にはこの説、かなり筋が通っていると感じています。


バビマイナは何を隠しているのか

バビマイナの行動にも違和感があります。オイトたちに「処分保留で部屋に拘留」と告げていますが、ベンジャミンは毒に侵されて余命わずかな状態で、一刻も早く邪魔な王子を始末したいはずです。それなのに、ワブルをただ部屋に留め置くだけというのは、あまりにも悠長すぎる対応に見えます。

ここから考えられるのは、バビマイナが1014号室にいるワブルが「偽物」であることをすでに知っていながら、その事実をベンジャミンに報告していない——つまり嘘をついているのではないか、という線です。ベンジャミンは特殊戒厳令後に「残る王子は4人」と発言していて、この4人にワブルは含まれていないと見られています。だとすると、バビマイナがあえて偽ワブルの存在を隠すことで、本物のワブルを守ろうとしている可能性も考えられます。ベンジャミンに従うふりをしながら、実は独自の思惑で動いている——そう考えると、バビマイナというキャラクターの見え方が結構変わってくる気がします。でもなぁ。冨樫先生は、こいついいやつじゃんって感情移入した頃に裏切らせるかコロされちゃうんだよなぁ。


継承戦の本当のゴールと、早すぎる特殊戒厳令

もう一つ大きな事実として、ビヨンドの口から継承戦のゴールについての説明がありました。ゴール自体は複数あるものの、ホイコロ一族が繁栄し守護霊獣の加護を受け継ぐための条件は「たった1人が生き残ること」ただ一つである、と明言されています。これはクラピカが以前から立てていた推測を裏付ける形になりました。

そしてクラピカ自身、「いくらなんでも特殊戒厳令の発令が早すぎる」という疑念を抱いています。ベンジャミンが毒で焦っているという表向きの理由だけでは説明がつかず、ウンマ王妃やビヨンド、あるいはハルケンブルグの狙いなど、誰かの思惑の上でこの状況が意図的に作られているのではないか——これはまだ想像でしかありませんが、この先クラピカ自身がその違和感に気づいていく展開になりそうな予感がしています。


まとめ

  • 【事実】ヒュリコフは2ヶ月前から自分のソエモノの呪いを把握しており、ビヨンドとも接触していた
  • 【事実】特殊戒厳令下、各王子陣営はそれぞれ独自の動きを見せている(行方不明・拘留・待機など状況はバラバラ)
  • 【事実】継承戦の勝利条件は「たった1人が生き残ること」であるとビヨンドが明言した
  • 【考察】ヒュリコフの沈黙には、単なる伝え損ねでは説明できない裏がある可能性
  • 【考察】ルズールスとライスの失踪は、ハルケンブルグ陣営による人格乗っ取りが絡んでいる可能性が高い
  • 【考察】バビマイナは偽ワブルの存在を把握しつつ隠蔽しており、独自の思惑で動いている可能性がある
  • 【注意】ここに書いた考察はあくまで現時点の情報から推測したものであり、今後の展開で覆る可能性があります

こうして書き出してみると、415話は「事実」の情報量がとにかく多い回でした。特にヒュリコフの件は、今後の展開次第でハンターハンター全体の見方が変わってきそうな気がしています。この続きについては、他の回の考察もあわせて読んでもらえると、話のつながりがもっと見えてくるはずです。

2026年7月21日火曜日

ハンターハンターのノウコって誰?名前だけの少女が結末を握る理由

ゴンがくじら島を出る日の場面って、覚えてますか。

朝の波止場で、船が出るところ。見送りの人が何人かいて、でもそんなに多くはなくて。小さい島だから当たり前なんですけど。

で、その中に子どもがひとりだけいるんですよ。

僕、何回も読んでるのに全然気づいてなかったんです。ゴンのほうばっかり見てたので。あの子は振り返らずに船に乗っていくじゃないですか。かっこいいなあと思って、そっちしか見てなかった。

でも残ってる側からしたら、あれって別れなんですよね。船が小さくなっていくのを最後まで見てた子がいたはずで。

その子の名前、たぶんノウコっていうんです。

今回はこのノウコって誰なんだ、という話を、原作に書いてあることだけを頼りに追いかけてみます。

※本記事は原作のネタバレを含みます。


ノウコって誰?

まず確実なところから並べておきます。ここを雑にすると、あとの話が全部あやしくなってしまうので。

  • ノウコは、ゴンと同じくじら島に住んでいる女の子
  • ゴンより年下です(作中では「小さな女の子」という言い方をされています)
  • 原作でもアニメでも、セリフがひとつもありません
  • 「この子がノウコです」とはっきり示されたコマもありません
  • 名前が出てくるのは、全部ゴンがしゃべっている場面です

ということで、ノウコって、名前だけが会話の中を二回通り過ぎていくキャラクターなんです。

あれだけ長い作品で、ここまで存在感の薄い名前もそうそうないと思うんですよね。全巻持ってる人でも「そんな子いたっけ?」ってなると思います。というか僕がそうでした。名前を見たとき、正直まったくピンとこなかったです。

その名前を口にしてるのは誰なのか、二回とも見てみる

一回目:島の子どもは自分ともう一人だけ、という話

ひとつめは、ゴンが自分の育った島について説明している場面です。

くじら島って観光客は来るんですけど、もともと住んでる島民自体はすごく少ない。で、その少ない島民の中で子どもは自分ともう一人しかいない、という話をしているんですね。

子供もオレの他はノウコ

ほんとにこれだけです。名前を出して、それで終わり。何の説明もありません。

単行本8巻15ページに出てきます。ゴンとキルアの会話。

二回目:誓いのチューの話

ふたつめは、キメラアント編のほうです。

ゴンが、くじら島に伝わる約束のやり方を説明する場面がありますよね。指切りをして、そのあと親指をくっつけるやつ。島のやり方なんだ、って。

ただゴン、そこにちょっと注釈をつけるんです。実際にやってるのは島のみんなじゃなくて、ほんの数人だけだ、と。

ミトさんとノウコくらい

ここ、けっこう引っかかりました。

だってゴンにとって「島の風習」って言えるくらい当たり前だったものが、実際にはミトとノウコの二人としか成立してないってことじゃないですか。島の文化だと思ってたものが、開けてみたらすごく狭い範囲の話だった。

これ、風習の説明をしてるようでいて、たぶんゴンの島での人間関係をぜんぶ言っちゃってる一文なんですよね。二人しかいないんだ、って。

じゃあ絵に描かれてるあの子は誰なのか

ここからはもう推測の話になります。

さっき書いた、ゴンが島を出ていく場面。見送りの中に女の子が描かれています。この子がノウコなんじゃないか、というのが昔からずっと言われている説です。

根拠は消去法ですね。

ゴン以外に島の子どもはノウコしかいないって作中で言ってるんだから、そこに子どもとして立ってる女の子はノウコになるはずだ、という理屈です。

まあ、通ってると思います。通ってるんですけど、作中で「この子がノウコです」って示された事実はないんですよ。なので僕は、かなり確度の高い推測、くらいのところで止めておきたいです。しかもアニメだと違う髪色の子として描かれてるという指摘もあるみたいで、絵のほうから特定しにいくと、きれいには決まらないんですよね。

結末の「Dパターン」で名前を出したのは誰なのか

で、ここで話が急に動きます。

2023年の11月に、あるテレビ番組の企画で、作者本人が『HUNTER×HUNTER』の結末について話したんです。結末はA・B・Cの3パターン用意してある、と。そのうえで、その候補から漏れた幻の「Dパターン」の中身が公開された、という流れでした。

もし完結しないまま自分が死んだら、これを結末だと思ってほしい。そういう位置づけのものだったそうです。

その文章の中に、ノウコの名前が出てくるんですね。

舞台はくじら島。ギンっていう名前の少女がいて、主を釣り上げる話が出てきて、旅に出たくないって言う子と、それを見守る親がいる。1巻でやったことがそのままもう一回やられてる感じの構成です。ここを読んだときは僕もちょっと声が出ました。

そしてギンの気質を説明する流れで、ミトとノウコの血筋、みたいな言い回しが出てくるんです。

で、ここからネットが真っ二つに割れました。

ノウコと結ばれたのは誰なんだ、という論争

だいたいこの3つに分かれてます。表にしておきますね。

そう読める理由弱いところ
ゴンとノウコは結ばれたギンの血筋を語るところにミトとノウコの名前が並んでいる。ノウコは島に残り続けた唯一の同世代なので、ゴンが島に帰るなら自然な流れになる結婚した、とはっきり書かれた箇所がない。読者の期待が読みを引っ張っている可能性がある
ゴンとノウコは結ばれていない文中に、ミトとノウコが血縁関係にないことを知らない人物がいる、という趣旨の但し書きがある。ミトが血縁じゃないのと同じ構造で、ノウコもギンの祖母ではないと読める血縁じゃないことと、結ばれてないことは厳密には別の話。婚姻と血筋を混ぜると崩れる
ノウコは第二のミト血縁ではないけれど島に残って、子を育てる役割を引き継いだ。ミトの立ち位置をそのまま継承した存在だという読み完全に読者側の解釈。文中に明示はない

ここは正直に線を引いておきます。

ゴンとノウコが結婚した、というのは原作の根拠じゃなくて、期待です。Dパターンの文面って、そう読もうと思えば読めるし、真逆にも読めるんですよ。しかもDパターン自体が本編じゃない。ここを混ぜて語るのは、僕はやりたくないなと思っています。

ノウコが背負わされてるのは誰の役割なんだろう

で、ここからが今回いちばん書きたかったところです。

僕、ノウコの扱いにずっと違和感があったんですよ。名前だけ二回出して、姿も声も与えない。キャラクターとしてまったく機能してないじゃないですか、普通に考えたら。

でも、さっきの二つの場面を並べてみたときに、ちょっと見え方が変わったんです。

一回目は、島の子どもは自分ともう一人だけ、という話でした。
二回目は、誓いの作法をやってるのはミトとノウコだけ、という話でした。

どっちも、ゴンが友達を紹介してる場面じゃないんですよね。島がどうなってるかを説明してる場面なんです。

つまりゴンって、ノウコのことを人として語ってないんですよ。島の説明の一部として語ってる。

これに気づいたとき、ちょっと気味が悪いくらいうまくできてるなと思いました。

ゴンにとってノウコは、個人であると同時に、くじら島そのものの一部として記憶されてるんじゃないかと僕は思っています。ミトさんが帰る家だとしたら、ノウコは帰る島のほう。ゴンがあの日振り返らずに船に乗れたのって、振り返らなくても島は変わらないって知ってたからですよね。で、その「島は変わらない」を人の形で保証してたのが、残ったもう一人の子どもだった。

だからDパターンで名前が出てきたときにあれだけ反応があったんだと思うんです。隠れヒロインが判明した、みたいな話じゃなくて。ゴンが出ていった場所がちゃんと生き続けてました、っていう報告だったから、みんな刺さったんじゃないかなと。

物語があれだけ広がって、暗黒大陸まで行って、それで最後に画面が戻る先が波止場なんですよ。しかもそこにいるのは、ずっと動かなかった側の人。

ちょっとズルいです、それは。

あと、これを言うと話が広がりすぎるんですけど、ジンとミトの関係が一世代ずれてそのまま繰り返されてる構図でもあるんですよね。出ていく人と、残る人。残ったほうは名前しか記録に残らない。それを二回も描いてる作品なんだなと思ったら、ノウコっていう名前を軽く扱えなくなってしまいました。

まとめ:ノウコについて言えること

  • 【事実】ノウコはくじら島に住む、ゴンより年下の女の子。原作でゴンが二回だけ名前を出しています
  • 【事実】セリフは一切なく、この人物がノウコだと明示されたコマもありません
  • 【事実】2023年11月放送のテレビ番組で、A・B・C案とは別の「Dパターン」が公開され、その文中にノウコの名前が出てきました
  • 【考察】島を出る場面の見送りの少女がノウコである可能性は高いと思いますが、消去法による推測で、確定ではありません
  • 【考察】ゴンはノウコを友人としてではなく、島の説明の一部として語っています。彼女はくじら島の変わらなさそのものを引き受けている気がします
  • 【注意】ゴンとノウコが結婚した、というのは原作の記述ではなく、Dパターンの解釈から出てきた読みです。真逆に読む説も同じくらい根拠があります
  • 【注意】Dパターンは本編ではありません。単行本の本編と混ぜて語らないほうがいいと思います

最後に

ノウコにはセリフがありません。顔も、正式には与えられていません。

それでも、あの島にはずっと誰かがいたんですよね。少年が振り返らずに出ていったあとも、そこで普通に生活していた人がいた。

物語ってどんどん外に広がっていくものだけど、帰る場所が成立するのは、誰かがそこに留まってくれてるからなんだと思います。

もし次に1巻34ページの波止場のページを開くことがあったら、船じゃなくて、見送ってる側を見てみてください。

たぶん、そっちに答えがあります。

2026年7月20日月曜日

ハンターハンターのジャイロとは何者?顔のない王の正体を追う

ずっと引っかかっていることがあります。

なぜ、あのキメラアント編の緊迫した状況の中で、

本筋の戦いとは一切交わらない、ある一人の男の過去に、丸々一話が費やされたのか。

それも、彼は主人公たちとニアミスしただけで、そのまま舞台から立ち去っていきました。

あの男の名前は。

……ジャイロ。

今回は、未回収のまま残された『HUNTER×HUNTER』史上最大の謎であるジャイロの正体の噂について、原作の描写を徹底的に掘り下げながら考えてみます。

※本記事は原作のネタバレを含みます。



ジャイロって何者?

まず確実なところから並べます。

  • ジャイロは、キメラアント編の舞台になった独立国家「NGL(ネオ・グリーン・ライフ)」を作った人物
  • 表向きは自然主義の国だけど、その裏を支配していた「裏の王」
  • 初めて語られるのは単行本20巻。しかもそれ以降、本編には一度も出てこない
  • 容姿は最後まで描かれていません(人間だった頃は黒塗り、その後もフードを被った姿)
  • セリフも少なく、物語に直接からむ場面もほとんどない

つまりジャイロって、たった一回、20巻でその存在が語られただけのキャラなんです。

それなのに、いまだにあれこれ考察され続けている。登場時間の短さと、残した引っかかりの大きさが、まったく釣り合ってないんですよね。ここがもう、いかにも冨樫義博先生という感じがします。

ジャイロは結局どこの誰なのか? NGLの裏の顔

ジャイロがやっていたことを、順番に見ていきます。

彼が作ったNGLは、機械文明を捨てて自然の中で生きる、という理念を掲げた国でした。でもそれは表の顔で、裏では「D²(ディーディー)」と呼ばれる飲むタイプの薬物を作って、外の世界に流していたんです。カイトですら、その裏側には気づけていませんでした。

で、ジャイロの目的なんですけど、これが普通じゃない。金儲けとか支配欲とか、そういうわかりやすいものじゃないんですよ。

作中の回想に、こういう趣旨の一文が出てきます。

全世界に悪意をばらまきたかった

薬物はその手始めで、まだやりたいことは山ほどあった、と続きます。

ここ、読んだとき背筋がひやっとしました。目的が「悪意をばらまくこと」そのものなんですよ。手段のために悪いことをするんじゃなくて、悪意を広げること自体がゴールになっている。動機がここまで突き抜けてる悪役って、エイ=イ一家のモレナ=プルードを思い出しますね。


ジャイロはどうやって王になった人間なのか?

ジャイロには、かなり過酷な生い立ちがあったことが描かれています。

ここは僕、あまり細かく書きたくないんです。読んでいてしんどい種類の過去だし、この記事で再現する必要もないと思うので。ひとつだけ言えるのは、彼はそういう境遇の中で育って、その結果として、世界そのものへの敵意をエネルギーに変えていった人間だ、ということです。

被害者だった子どもが、いつのまにか、世界に牙をむく側に回っていた。

そして自分の手で国をひとつ作り上げて、王になった。誰かに与えられた立場じゃなくて、ゼロから自分で奪い取った王座なんですよね。この「自分で王になった」という点が、あとの話ですごく効いてきます。

ジャイロはその後どうなったのか?

ここが一番聞かれるところだと思います。「で、ジャイロってどうなったの?」って。

キメラアント編の序盤で、NGLはキメラアントの群れに襲われます。ジャイロも女王に捕食されて、人間としては命を落としました。

ただ、話はそこで終わらないんです。

ジャイロは捕食されたことで、今度はキメラアントとして生まれ変わりました。しかも、多くのキメラアントが人間だった頃の記憶を失うなかで、彼は記憶を持ったままの例外的な存在として描かれています。そして女王のもとを離れて、どこかへ消えた。

じゃあどこへ行ったのか。ここからは推測の領域になります。有力な説を表に整理してみますね。

根拠になっている描写弱いところ
流星街へ向かったウェルフィンたち複数のキャラが、ジャイロの行き先として流星街を示唆する発言をしているあくまで作中人物の推測。ジャイロ本人がそこで何をしたかは描かれていない
新しい国を作ろうとしているNGLをゼロから築いた前歴がある。流星街は外部の干渉を受けにくい土地完全に読者側の想像で、原作に根拠はない
いつかゴンと対決する20巻に、ゴンと出会う日まで幸運か不運かわからない、という趣旨の地の文がある「出会う」ことは示されても、「対決する」とまでは書かれていない

正直に線を引いておきます。

ジャイロがその後どうなったかは、原作でははっきり描かれていません。流星街説は、あくまで他のキャラの推測発言が根拠であって、確定情報ではないんです。「流星街に向かったという見方が有力」というところまでで止めておくのが、いちばん誠実だと思います。

この歯切れの悪さ自体が、ジャイロというキャラの魅力なのかもしれません。

ジャイロは何者として戻ってくるのか? ここからは僕の見立て

ここからが、この記事でいちばん書きたかったところです。

僕、ジャイロについて調べていて、あることに気づいたんです。冨樫義博はこのキャラの「三つのこと」を、そろって空白のままにしてるんですよね。

ひとつめは、顔。人間の頃もその後も、一度も描かれていません。
ふたつめは、その後。生き残ったのに、行方が描かれていません。
みっつめは、ゴンとの関係。出会う日まで幸運か不運かわからない、とだけ書いて、その日は来ていません。

顔も、未来も、主人公との接点も、ぜんぶ埋めずに残してある。

これ、ただの思わせぶりじゃない気がするんです。というのも、キメラアント編にはもうひとり、王がいましたよね。メルエムです。

メルエムは、生まれながらの王でした。女王に望まれて生まれて、護衛軍に心から慕われて、最初から与えられた王だった。

ジャイロは、その正反対なんですよ。誰にも望まれず、過酷な境遇から這い上がって、自分の手で王の座を奪い取った。与えられた王と、奪って作った王。

で、物語の中で、メルエムのほうは答えが出ました。コムギとの関係を通して、王として完結して、命を落とした。ちゃんと描き切られたんです。

でもジャイロは、器を空けたまま生き残った。

僕には、冨樫がキメラアント編で「王とは何か」というテーマを、この二人一組で描こうとしていたように見えます。片方(メルエム)で一度きれいに答えを出して、もう片方(ジャイロ)を、あえて未完成のまま暗黒大陸編に持ち越した。顔を描かないのも、その後を描かないのも、「この器はまだ空いてますよ」という合図なんじゃないかなと。

だとすると、ジャイロがいつか戻ってくるとき、それは単なる強い敵の再登場じゃないと思うんです。メルエムで出した答えの、裏側の答え合わせとして出てくる。そういう役割を背負わされている気がしてなりません。

まあ、ここまでは完全に僕の読みなので、当たってるかはわかりません。でも、顔を描かなかった理由を考えると、どうしてもここに行き着いてしまうんですよね。

あとはジャイロという名前が気になります。キメラアント編では野球のピッチャーの球種であるナックル、シュート、パームがハンターとして登場します。

ジャイロも球種だとするとハンターとして登場する?実は共選ハンターとしてブラックホエール号に乗り込んでたりして。


まとめ:ジャイロについて言えること

  • 【事実】ジャイロは独立国家NGLの創設者で、裏では薬物を製造していた「裏の王」。単行本20巻で語られました
  • 【事実】容姿は最後まで描かれておらず、20巻以降は本編に登場していません
  • 【事実】キメラアントに捕食されて人間としては命を落とし、記憶を持ったままキメラアントとして生まれ変わり、女王のもとを離れました
  • 【考察】その後は流星街に向かったという見方が有力ですが、これは他キャラの推測発言が根拠で、確定ではありません