ずっと引っかかっていることがあります。
なぜ、あのキメラアント編の緊迫した状況の中で、
本筋の戦いとは一切交わらない、ある一人の男の過去に、丸々一話が費やされたのか。
それも、彼は主人公たちとニアミスしただけで、そのまま舞台から立ち去っていきました。
あの男の名前は。
……ジャイロ。
今回は、未回収のまま残された『HUNTER×HUNTER』史上最大の謎であるジャイロの正体の噂について、原作の描写を徹底的に掘り下げながら考えてみます。
※本記事は原作のネタバレを含みます。
ジャイロって何者?
まず確実なところから並べます。
- ジャイロは、キメラアント編の舞台になった独立国家「NGL(ネオ・グリーン・ライフ)」を作った人物
- 表向きは自然主義の国だけど、その裏を支配していた「裏の王」
- 初めて語られるのは単行本20巻。しかもそれ以降、本編には一度も出てこない
- 容姿は最後まで描かれていません(人間だった頃は黒塗り、その後もフードを被った姿)
- セリフも少なく、物語に直接からむ場面もほとんどない
つまりジャイロって、たった一回、20巻でその存在が語られただけのキャラなんです。
それなのに、いまだにあれこれ考察され続けている。登場時間の短さと、残した引っかかりの大きさが、まったく釣り合ってないんですよね。ここがもう、いかにも冨樫義博先生という感じがします。
ジャイロは結局どこの誰なのか? NGLの裏の顔
ジャイロがやっていたことを、順番に見ていきます。
彼が作ったNGLは、機械文明を捨てて自然の中で生きる、という理念を掲げた国でした。でもそれは表の顔で、裏では「D²(ディーディー)」と呼ばれる飲むタイプの薬物を作って、外の世界に流していたんです。カイトですら、その裏側には気づけていませんでした。
で、ジャイロの目的なんですけど、これが普通じゃない。金儲けとか支配欲とか、そういうわかりやすいものじゃないんですよ。
作中の回想に、こういう趣旨の一文が出てきます。
全世界に悪意をばらまきたかった
薬物はその手始めで、まだやりたいことは山ほどあった、と続きます。
ここ、読んだとき背筋がひやっとしました。目的が「悪意をばらまくこと」そのものなんですよ。手段のために悪いことをするんじゃなくて、悪意を広げること自体がゴールになっている。動機がここまで突き抜けてる悪役って、エイ=イ一家のモレナ=プルードを思い出しますね。
ジャイロはどうやって王になった人間なのか?
ジャイロには、かなり過酷な生い立ちがあったことが描かれています。
ここは僕、あまり細かく書きたくないんです。読んでいてしんどい種類の過去だし、この記事で再現する必要もないと思うので。ひとつだけ言えるのは、彼はそういう境遇の中で育って、その結果として、世界そのものへの敵意をエネルギーに変えていった人間だ、ということです。
被害者だった子どもが、いつのまにか、世界に牙をむく側に回っていた。
そして自分の手で国をひとつ作り上げて、王になった。誰かに与えられた立場じゃなくて、ゼロから自分で奪い取った王座なんですよね。この「自分で王になった」という点が、あとの話ですごく効いてきます。
ジャイロはその後どうなったのか?
ここが一番聞かれるところだと思います。「で、ジャイロってどうなったの?」って。
キメラアント編の序盤で、NGLはキメラアントの群れに襲われます。ジャイロも女王に捕食されて、人間としては命を落としました。
ただ、話はそこで終わらないんです。
ジャイロは捕食されたことで、今度はキメラアントとして生まれ変わりました。しかも、多くのキメラアントが人間だった頃の記憶を失うなかで、彼は記憶を持ったままの例外的な存在として描かれています。そして女王のもとを離れて、どこかへ消えた。
じゃあどこへ行ったのか。ここからは推測の領域になります。有力な説を表に整理してみますね。
| 説 | 根拠になっている描写 | 弱いところ |
|---|---|---|
| 流星街へ向かった | ウェルフィンたち複数のキャラが、ジャイロの行き先として流星街を示唆する発言をしている | あくまで作中人物の推測。ジャイロ本人がそこで何をしたかは描かれていない |
| 新しい国を作ろうとしている | NGLをゼロから築いた前歴がある。流星街は外部の干渉を受けにくい土地 | 完全に読者側の想像で、原作に根拠はない |
| いつかゴンと対決する | 20巻に、ゴンと出会う日まで幸運か不運かわからない、という趣旨の地の文がある | 「出会う」ことは示されても、「対決する」とまでは書かれていない |
正直に線を引いておきます。
ジャイロがその後どうなったかは、原作でははっきり描かれていません。流星街説は、あくまで他のキャラの推測発言が根拠であって、確定情報ではないんです。「流星街に向かったという見方が有力」というところまでで止めておくのが、いちばん誠実だと思います。
この歯切れの悪さ自体が、ジャイロというキャラの魅力なのかもしれません。
ジャイロは何者として戻ってくるのか? ここからは僕の見立て
ここからが、この記事でいちばん書きたかったところです。
僕、ジャイロについて調べていて、あることに気づいたんです。冨樫義博はこのキャラの「三つのこと」を、そろって空白のままにしてるんですよね。
ひとつめは、顔。人間の頃もその後も、一度も描かれていません。
ふたつめは、その後。生き残ったのに、行方が描かれていません。
みっつめは、ゴンとの関係。出会う日まで幸運か不運かわからない、とだけ書いて、その日は来ていません。
顔も、未来も、主人公との接点も、ぜんぶ埋めずに残してある。
これ、ただの思わせぶりじゃない気がするんです。というのも、キメラアント編にはもうひとり、王がいましたよね。メルエムです。
メルエムは、生まれながらの王でした。女王に望まれて生まれて、護衛軍に心から慕われて、最初から与えられた王だった。
ジャイロは、その正反対なんですよ。誰にも望まれず、過酷な境遇から這い上がって、自分の手で王の座を奪い取った。与えられた王と、奪って作った王。
で、物語の中で、メルエムのほうは答えが出ました。コムギとの関係を通して、王として完結して、命を落とした。ちゃんと描き切られたんです。
でもジャイロは、器を空けたまま生き残った。
僕には、冨樫がキメラアント編で「王とは何か」というテーマを、この二人一組で描こうとしていたように見えます。片方(メルエム)で一度きれいに答えを出して、もう片方(ジャイロ)を、あえて未完成のまま暗黒大陸編に持ち越した。顔を描かないのも、その後を描かないのも、「この器はまだ空いてますよ」という合図なんじゃないかなと。
だとすると、ジャイロがいつか戻ってくるとき、それは単なる強い敵の再登場じゃないと思うんです。メルエムで出した答えの、裏側の答え合わせとして出てくる。そういう役割を背負わされている気がしてなりません。
まあ、ここまでは完全に僕の読みなので、当たってるかはわかりません。でも、顔を描かなかった理由を考えると、どうしてもここに行き着いてしまうんですよね。
あとはジャイロという名前が気になります。キメラアント編では野球のピッチャーの球種であるナックル、シュート、パームがハンターとして登場します。
ジャイロも球種だとするとハンターとして登場する?実は共選ハンターとしてブラックホエール号に乗り込んでたりして。
まとめ:ジャイロについて言えること
- 【事実】ジャイロは独立国家NGLの創設者で、裏では薬物を製造していた「裏の王」。単行本20巻で語られました
- 【事実】容姿は最後まで描かれておらず、20巻以降は本編に登場していません
- 【事実】キメラアントに捕食されて人間としては命を落とし、記憶を持ったままキメラアントとして生まれ変わり、女王のもとを離れました
- 【考察】その後は流星街に向かったという見方が有力ですが、これは他キャラの推測発言が根拠で、確定ではありません
