2026年7月21日火曜日

ハンターハンターのノウコって誰?名前だけの少女が結末を握る理由

ゴンがくじら島を出る日の場面って、覚えてますか。

朝の波止場で、船が出るところ。見送りの人が何人かいて、でもそんなに多くはなくて。小さい島だから当たり前なんですけど。

で、その中に子どもがひとりだけいるんですよ。

僕、何回も読んでるのに全然気づいてなかったんです。ゴンのほうばっかり見てたので。あの子は振り返らずに船に乗っていくじゃないですか。かっこいいなあと思って、そっちしか見てなかった。

でも残ってる側からしたら、あれって別れなんですよね。船が小さくなっていくのを最後まで見てた子がいたはずで。

その子の名前、たぶんノウコっていうんです。

今回はこのノウコって誰なんだ、という話を、原作に書いてあることだけを頼りに追いかけてみます。

※本記事は原作のネタバレを含みます。


ノウコって誰?

まず確実なところから並べておきます。ここを雑にすると、あとの話が全部あやしくなってしまうので。

  • ノウコは、ゴンと同じくじら島に住んでいる女の子
  • ゴンより年下です(作中では「小さな女の子」という言い方をされています)
  • 原作でもアニメでも、セリフがひとつもありません
  • 「この子がノウコです」とはっきり示されたコマもありません
  • 名前が出てくるのは、全部ゴンがしゃべっている場面です

ということで、ノウコって、名前だけが会話の中を二回通り過ぎていくキャラクターなんです。

あれだけ長い作品で、ここまで存在感の薄い名前もそうそうないと思うんですよね。全巻持ってる人でも「そんな子いたっけ?」ってなると思います。というか僕がそうでした。名前を見たとき、正直まったくピンとこなかったです。

その名前を口にしてるのは誰なのか、二回とも見てみる

一回目:島の子どもは自分ともう一人だけ、という話

ひとつめは、ゴンが自分の育った島について説明している場面です。

くじら島って観光客は来るんですけど、もともと住んでる島民自体はすごく少ない。で、その少ない島民の中で子どもは自分ともう一人しかいない、という話をしているんですね。

子供もオレの他はノウコ

ほんとにこれだけです。名前を出して、それで終わり。何の説明もありません。

単行本8巻15ページに出てきます。ゴンとキルアの会話。

二回目:誓いのチューの話

ふたつめは、キメラアント編のほうです。

ゴンが、くじら島に伝わる約束のやり方を説明する場面がありますよね。指切りをして、そのあと親指をくっつけるやつ。島のやり方なんだ、って。

ただゴン、そこにちょっと注釈をつけるんです。実際にやってるのは島のみんなじゃなくて、ほんの数人だけだ、と。

ミトさんとノウコくらい

ここ、けっこう引っかかりました。

だってゴンにとって「島の風習」って言えるくらい当たり前だったものが、実際にはミトとノウコの二人としか成立してないってことじゃないですか。島の文化だと思ってたものが、開けてみたらすごく狭い範囲の話だった。

これ、風習の説明をしてるようでいて、たぶんゴンの島での人間関係をぜんぶ言っちゃってる一文なんですよね。二人しかいないんだ、って。

じゃあ絵に描かれてるあの子は誰なのか

ここからはもう推測の話になります。

さっき書いた、ゴンが島を出ていく場面。見送りの中に女の子が描かれています。この子がノウコなんじゃないか、というのが昔からずっと言われている説です。

根拠は消去法ですね。

ゴン以外に島の子どもはノウコしかいないって作中で言ってるんだから、そこに子どもとして立ってる女の子はノウコになるはずだ、という理屈です。

まあ、通ってると思います。通ってるんですけど、作中で「この子がノウコです」って示された事実はないんですよ。なので僕は、かなり確度の高い推測、くらいのところで止めておきたいです。しかもアニメだと違う髪色の子として描かれてるという指摘もあるみたいで、絵のほうから特定しにいくと、きれいには決まらないんですよね。

結末の「Dパターン」で名前を出したのは誰なのか

で、ここで話が急に動きます。

2023年の11月に、あるテレビ番組の企画で、作者本人が『HUNTER×HUNTER』の結末について話したんです。結末はA・B・Cの3パターン用意してある、と。そのうえで、その候補から漏れた幻の「Dパターン」の中身が公開された、という流れでした。

もし完結しないまま自分が死んだら、これを結末だと思ってほしい。そういう位置づけのものだったそうです。

その文章の中に、ノウコの名前が出てくるんですね。

舞台はくじら島。ギンっていう名前の少女がいて、主を釣り上げる話が出てきて、旅に出たくないって言う子と、それを見守る親がいる。1巻でやったことがそのままもう一回やられてる感じの構成です。ここを読んだときは僕もちょっと声が出ました。

そしてギンの気質を説明する流れで、ミトとノウコの血筋、みたいな言い回しが出てくるんです。

で、ここからネットが真っ二つに割れました。

ノウコと結ばれたのは誰なんだ、という論争

だいたいこの3つに分かれてます。表にしておきますね。

そう読める理由弱いところ
ゴンとノウコは結ばれたギンの血筋を語るところにミトとノウコの名前が並んでいる。ノウコは島に残り続けた唯一の同世代なので、ゴンが島に帰るなら自然な流れになる結婚した、とはっきり書かれた箇所がない。読者の期待が読みを引っ張っている可能性がある
ゴンとノウコは結ばれていない文中に、ミトとノウコが血縁関係にないことを知らない人物がいる、という趣旨の但し書きがある。ミトが血縁じゃないのと同じ構造で、ノウコもギンの祖母ではないと読める血縁じゃないことと、結ばれてないことは厳密には別の話。婚姻と血筋を混ぜると崩れる
ノウコは第二のミト血縁ではないけれど島に残って、子を育てる役割を引き継いだ。ミトの立ち位置をそのまま継承した存在だという読み完全に読者側の解釈。文中に明示はない

ここは正直に線を引いておきます。

ゴンとノウコが結婚した、というのは原作の根拠じゃなくて、期待です。Dパターンの文面って、そう読もうと思えば読めるし、真逆にも読めるんですよ。しかもDパターン自体が本編じゃない。ここを混ぜて語るのは、僕はやりたくないなと思っています。

ノウコが背負わされてるのは誰の役割なんだろう

で、ここからが今回いちばん書きたかったところです。

僕、ノウコの扱いにずっと違和感があったんですよ。名前だけ二回出して、姿も声も与えない。キャラクターとしてまったく機能してないじゃないですか、普通に考えたら。

でも、さっきの二つの場面を並べてみたときに、ちょっと見え方が変わったんです。

一回目は、島の子どもは自分ともう一人だけ、という話でした。
二回目は、誓いの作法をやってるのはミトとノウコだけ、という話でした。

どっちも、ゴンが友達を紹介してる場面じゃないんですよね。島がどうなってるかを説明してる場面なんです。

つまりゴンって、ノウコのことを人として語ってないんですよ。島の説明の一部として語ってる。

これに気づいたとき、ちょっと気味が悪いくらいうまくできてるなと思いました。

ゴンにとってノウコは、個人であると同時に、くじら島そのものの一部として記憶されてるんじゃないかと僕は思っています。ミトさんが帰る家だとしたら、ノウコは帰る島のほう。ゴンがあの日振り返らずに船に乗れたのって、振り返らなくても島は変わらないって知ってたからですよね。で、その「島は変わらない」を人の形で保証してたのが、残ったもう一人の子どもだった。

だからDパターンで名前が出てきたときにあれだけ反応があったんだと思うんです。隠れヒロインが判明した、みたいな話じゃなくて。ゴンが出ていった場所がちゃんと生き続けてました、っていう報告だったから、みんな刺さったんじゃないかなと。

物語があれだけ広がって、暗黒大陸まで行って、それで最後に画面が戻る先が波止場なんですよ。しかもそこにいるのは、ずっと動かなかった側の人。

ちょっとズルいです、それは。

あと、これを言うと話が広がりすぎるんですけど、ジンとミトの関係が一世代ずれてそのまま繰り返されてる構図でもあるんですよね。出ていく人と、残る人。残ったほうは名前しか記録に残らない。それを二回も描いてる作品なんだなと思ったら、ノウコっていう名前を軽く扱えなくなってしまいました。

まとめ:ノウコについて言えること

  • 【事実】ノウコはくじら島に住む、ゴンより年下の女の子。原作でゴンが二回だけ名前を出しています
  • 【事実】セリフは一切なく、この人物がノウコだと明示されたコマもありません
  • 【事実】2023年11月放送のテレビ番組で、A・B・C案とは別の「Dパターン」が公開され、その文中にノウコの名前が出てきました
  • 【考察】島を出る場面の見送りの少女がノウコである可能性は高いと思いますが、消去法による推測で、確定ではありません
  • 【考察】ゴンはノウコを友人としてではなく、島の説明の一部として語っています。彼女はくじら島の変わらなさそのものを引き受けている気がします
  • 【注意】ゴンとノウコが結婚した、というのは原作の記述ではなく、Dパターンの解釈から出てきた読みです。真逆に読む説も同じくらい根拠があります
  • 【注意】Dパターンは本編ではありません。単行本の本編と混ぜて語らないほうがいいと思います

最後に

ノウコにはセリフがありません。顔も、正式には与えられていません。

それでも、あの島にはずっと誰かがいたんですよね。少年が振り返らずに出ていったあとも、そこで普通に生活していた人がいた。

物語ってどんどん外に広がっていくものだけど、帰る場所が成立するのは、誰かがそこに留まってくれてるからなんだと思います。

もし次に1巻34ページの波止場のページを開くことがあったら、船じゃなくて、見送ってる側を見てみてください。

たぶん、そっちに答えがあります。

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